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親知らず(親不知、智歯)の抜歯について(矯正歯科Q&A29)

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親知らずがあります。矯正治療前に抜歯をしたほうがいいのでしょうか?

親知らずに関するご質問は私が想像するよりとても多いのが実情です。
少なからずの方が「親知らず=抜歯するもの」とお考えのようです。確かに親知らずが上下左右4本きちんと萌出し、咬合している方は現代の日本では稀とも言えます。私の感覚では100人に1人か2人ではないでしょうか。
ところが、出典は失念してしまいましたが、ヤノマミ族(南米の先住民族)のように現在でも伝統的な生活様式を保っている場合には親知らずがきちんと咬合している例が多いとの研究報告を読んだことがあります。伝統的な食生活は現代日本人の食生活に比べ咀嚼回数が多いため、1本1本の歯が擦り減り小さくなる。そのため親知らずが萌出する頃には歯列後方に親知らずのためのスペースができている、確かそんな説だったと思います。

一般的には近年の文化的進歩が速く進み過ぎたため、DNAの変化が追い付いていないと説明されることが多いと思います。私もたまに考えるのですが、江戸時代は1603年から1868年まで約260年続きましたが、この間、そんなに人々の生活は変わっていない気がします。その後、現在までの150年で移動手段が徒歩(せいぜい馬)から飛行機になり、連絡手段も飛脚(やっぱり徒歩)からメールへと凄い変化が起こりました。スズメは江戸時代から今のスズメでしょうし、生物の中で人類だけが生活様式において劇的な変化を遂げています。

前置きが長くなりました。親知らずの抜歯ですが、矯正治療と切り離して考えるとスッキリすると思います。一般的に親知らずは矯正治療の治療計画に組み込まれないことが多いです。親不知を利用することもありますが、たいていは横向きに生えていたりで利用できないことが多いからです。では親知らずを抜歯したほうがいいケースとはどのような状況かというと「親知らずが存在することで既に悪影響がある、あるいは将来的に悪影響が予測される」場合です。矯正治療との関連でお話しすると、矯正治療にとって親知らずの存在が大きな悪影響を及ぼすようなケースは稀、といえます。そういう理由で矯正治療と親知らずは分けて考えた方がいいのです。

例として症例を提示します

左のレントゲン写真にある親知らず(第三大臼歯)は斜めに生えており、運悪く手前にある12歳臼歯(第二大臼歯)を溶かしていました(永久歯が乳歯の根を吸収するのと同じです。これから萌出しようとする歯にとっては乳歯だろうと永久歯だろうと関係ありません。自分の進路を妨げるものは吸収してしまうだけのことです)。そこで、12歳臼歯を抜歯して親知らずを矯正治療によって配列したのが右の写真です。
この症例はもっと早く気が付いていれば親知らずを抜歯しただけで済んだかもしれなかった症例です。結果的に「親知らずが存在することで既に悪影響があり」、かつ「親知らずを抜歯することでは問題を解決することができないほど状況が悪化していた」ために逆に親知らずを活用することになりました。
矯正治療のために親知らずの抜歯が必要になることはあまりありませんが、咬合していないのであれば上記のようなリスクがありますので抜歯を検討することになります。また、女性の場合、妊娠中に親知らずを抜歯するのはレントゲン、投薬の観点からできれば避けたいので事前に抜歯をすすめる場合もあります。いずれにしてもケースバイケースといいますか、医科でいえば盲腸に対する対応に近いと言えるかもしれません。リスクを患者様がどれだけ重視するか、だと思います。

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