ブラックトライアングルとは
ブラックトライアングルとは歯と歯の間にできる三角形の空隙をさします。
主に歯周病によって歯槽骨・歯肉が退縮した際に生じるものですが、稀に矯正治療の副作用として生じることがあります。もっとも、矯正治療によって生じたブラックトライアングルは軽微なことが多く臨床上問題になることはあまりありません。また、ブラックトライアングル自体は病的なものではなく、歯槽骨や歯肉の形態変化の結果といえます。
例えるならば、転んで怪我をした際の傷跡のようなもので、それは創傷治癒の結果であり健康には問題がありません。
ブラックトライアングルもこれと同じでそれ自体が問題になるわけではありませんが、矯正治療を行った患者様は審美目的で来院されることがほとんどですからやはり無視することはできません。
矯正治療によってブラックトライアングルが生じやすい臨床的条件は
*ひどい凸凹
*年齢(一概に言えませんが矯正治療開始年齢が40歳以上になると確率が上がるかなと思います)
*歯周病に罹患している
といったところです。
ブラックトライアングルは自然に治るのか?
矯正治療でブラックトライアングルが生じることはあまりありませんが、私の経験では程度の差こそあれ1~2%の確率で生じてしまいます。
では、ブラックトライアングルは自然に治らないのでしょうか?私は必ずしもそう考えていなかったのですが、一般的には自然治癒しないという意見の方が多いように感じています。
私自身は矯正治療後のブラックトライアングルが自然に治癒した症例をいくつも経験しておりブラックトライアングルは自然治癒しないという意見に否定的です。もちろん、すべての患者様が自然治癒するわけではありませんが、歯周病によって生じたブラックトライアングルと矯正治療によって生じたブラックトライアングルを同列に扱うべきではないのかなとも考えています。
歯周病由来のブラックトライアングルは前歯部のみならず、全顎的に歯周病が進行し、歯槽骨の吸収が進行していることが多いです。一方で矯正治療によって生じるブラックトライアングルは局所的なことが多いです。
ブラックトライアングルが自然に治ることがあるのか、試しに流行のAIに聞いてみました。
このような結果で、「ブラックトライアングルが自然に治癒することないようです」というのがAIの答えでした。もっともAIは過去に作成されたWEBページをスクロールして回答を導き出しているだけですからそれが事実か否かの保証はありません。参照しているWEBページが間違っていれば間違った答えを出してきます。
私は矯正治療によって生じたブラックトライアングルが自然治癒した症例を多く経験してきていることもあり、今回は症例を供覧しながら考えてみたいと思います。
症例1
初診時 |
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装置撤去時ブラックトライアングル |
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装置撤去9か月後 |
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本症例は初診時42歳の女性の患者様です。矯正装置撤去直後は上顎前歯部、下顎前歯部にブラックトライアングルが生じていますが、装置撤去後9か月で特に上顎前歯部のブラックトライアングルは自然に改善しています。
症例2
初診時 |
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装置撤去時ブラックトライアングル |
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装置撤去24か月後 |
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初診時年齢24歳の女性の患者様。矯正装置撤去直後は上顎中切歯間、下顎前歯部間にブラックトライアングルが認められますが、矯正装置を撤去して24か月後にはほ消失しています。
症例3
初診時 |
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装置撤去時ブラックトライアングル |
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装置撤去24か月後 |
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初診時年齢23歳の女性の患者様。この程度だと審美的に問題になることもあまりありませんが、矯正装置撤去直後は上顎中切歯間、下顎切歯間にブラックトライアングルが生じていますが、矯正装置撤去24か月後には自然治癒しています。
ブラックトライアングルへの対応
このように矯正治療によって生じたブラックトライアングルは自然治癒することも多いです。
特に20代までの軽微なブラックトライアングルは自然治癒も十分期待できると考えています。一方で大きなブラックトライアングルや40代以降になると自然治癒の期待値が低下します。
その場合の対応策としては
1・隣接面を僅かに削合することにより矯正装置撤去前にブラックトライアングルを小さくする
2・ヒアルロン酸を歯肉に注入することでブラックトライアングルの縮小を期待する
などがあります。1は物理的に小さくなるので確実ですが、2のヒアルロン酸に関しては私も過去に施術したことがありますがあまり大きな効果を得られませんでした。
供覧した症例のように自然治癒することもあるわけですから、ブラックトライアングルの縮小が自然治癒によるものなのか、ヒアルロン酸注入によるものなのかの判別も難しいと思います。
矯正装置を撤去して1年経過して、装置撤去時と全く変化がないようであれば選択肢の一つとしてはあるのかな、と感じています。