歯科矯正用アンカースクリューについてのご質問|アクイユ矯正歯科クリニック(所沢市)|埼玉県新所沢駅の矯正歯科医院
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歯科矯正用アンカースクリューについてのご質問

患者様からのご質問①

出っ歯(上顎前突)で悩んでいます。 前歯が傾いて出っ歯なのではなく、歯茎から出ているので手術も考えました。
でも、かみ合わせはほとんど問題ないのに完全に美容目的でそこまでの手術をする決断がどうしても出来ずに何年も過ぎてしまいました。
ある時、歯科矯正用アンカースクリューを使用した矯正治療、それもA社のアンカースクリューを使うと抜歯矯正でかなり引っ込められると知りました。アクイユ矯正歯科で治療する場合、A社のアンカースクリューを使うことはできますか?
アンカースクリュー矯正というのは抜歯した隙間に向かって前歯を引っ込める手助けをするのだと思うのですがA社のアンカースクリューは他社のアンカースクリューと比較してどういう所が優れているのでしょうか?

当院からのお返事①

>A社のアンカースクリューを使うことはできますか?

A社のアンカースクリューですが、私自身も口蓋に植立するインプラントはA社のアンカースクリューを使用していました。。とても良いアンカースクリューだと思います。
ただ、構造がやや複雑過ぎて扱いにくい部分もあります。2010年頃は類似品が他に無かったのでA社のアンカースクリューを使用していましたが、現在ではアンカースクリューも各社から様々なタイプのものが発売されており、当院ではA社のアンカースクリューはあまり使用していません。

当院でのA社のアンカースクリューですが、5セットほどありますので使用することは可能です。ただ、用途にもよりますが上顎前突の治療にA社のアンカースクリューを選択する優位性は現在ではあまりないように感じます。治療効果として劣っているということではなくて、簡便性という意味において後発メーカーの商品の方が優れていると思うからです。そのためにA社のアンカースクリューの在庫がずっと残っている状況です。

>このAインプラントという器具は他のインプラントアンカーよりどういう所が優れているのでしょうか?

率直に言うと、現在ではあまり利点は無いように思います。欠点もないですが。強いて言えばアンカースクリューと土台とを固定する部分がネジ止めなので、このネジが馬鹿になると使えなくなります。構造が複雑過ぎてそれが却って口腔内で使うには足かせになっている点は否めないかもしれません。また、ある特定の移動様式(圧下など)に際してはA社のアンカースクリューは他のアンカースクリューよりも操作しやすいと思います。

患者様からのご質問②

ただ、用途にもよりますが上顎前突の治療にAインプラントを選択する優位性は現在ではあまりないように感じます。治療効果として劣っているということではなくて、簡便性という意味において後発メーカーの商品の方が優れていると思うからです。

そうだったんですね。
名前をよく聞くので、「素人の一つ覚え」で、いい物に違いない、これで治療すれば願いが叶う・・・なんて思っていたのですが、今では十分に優れた代用品があるのですね。

参考にした相談サイトには
大幅な歯列遠心移動を達成することが目的なら、A社のアンカースクリューようなプレート型アンカーが適していてただのスクリュー型アンカーでは力不足のようなことが書かれていました。
これも必ずしも正しくはないのでしょうか?先生が使っていらっしゃるインプラントはプレート型ですか。

自己判断で恐縮ですが、私の口元はガミーでもないので圧下などは必要ないと思います。ただ、それほど傾いていないのに歯茎の部分がモコッと前突しています。できるだけ平行に引っ込めたいと思っています。

美容外科の先生には「矯正は傾きメインで歯茎は下がらないから、そこ下げるならルフォー手術でしょ。歯体移動なんて理論だけで、現実は傾いた前歯しか見ない」なんて言われたこともあります。もちろん、もう手術は考えていませんし、歯体移動が理論だけなんて言うのは矯正のことを知らない先生だったのは今は分かっています。

そういう経緯もあり、上の前歯を平行に引っ込めるには普通のスクリュー型アンカーよりも、A社のアンカースクリューが優れているのかな、と思っておりましたがその優位性もあまりなく、代用品で十分ということでしょうか?

当院からのお返事②

要は前歯部を後退させるためのフックをアンカースクリューから伸展させて設ければいいだけですから、プレート型でもスクリュー型でもなんでも構わないのです。歯列全体の遠心移動でも同じことです。
それから、A社のアンカースクリューはスクリュー型のアンカースクリュー2本を土台にしてプレートをネジ止めしたものですからスクリュー型のアンカースクリューに分類されると思います(リンク先の先生の勘違い??)。プレート型のアンカースクリューは手術が大掛かりになりますから現在ではほとんど使われていないと思いますし、プレート型のアンカースクリューの外科手術を矯正歯科の外来で処置するのは困難です(口腔外科に依頼することになります)。

写真a
写真b
写真c

上の写真のaがA社のアンカースクリュー、bが自作のワイヤーを2本のアンカースクリューに針金で固定して牽引用のフックを付与したもの、cが現在主に使っているもので、2本のアンカースクリューにクリップのように挟んで使用するものです。

いずれも2本のアンカースクリューを土台にしています(A社のアンカースクリューは3本に見えますが、真ん中はプレートを固定するネジでアンカースクリューの本数は2本です)。また、いずれも使用目的は前歯部を後退させることです。少なくともこのような歯の移動様式においてはA社のアンカースクリューである必要性はないと思います。どれも目的はアンカースクリューからフックを伸展させることですが、a,b,cの順で装置の構造や装着は簡単になっています。

後方に牽引するだけならアンカースクリューから直接牽引しても良さそうなものですが、そうすると後方への力に加えて中央および上方(アンカースクリューが口蓋正中に植立されているため)への牽引力も発生してしまいます。これを避けるためにアンカースクリューからフックを伸ばして後方へ水平的にも垂直的にもなるべく真っ直ぐ牽引します。

もう一つの方法として、大臼歯の歯と歯の間にアンカースクリューを植立する方法もあります。

この場合にはフックを付与する必要はなく、直接アンカースクリューから牽引することができます。ただ、大臼歯間の口蓋粘膜は厚いことが多く、例えば口蓋粘膜の厚みが5mmあると8mmの長さのアンカースクリューを使用しても3mmしか骨に到達しないことになります。その分アンカースクリューの長さを長くすればいいといえばそうですが、アンカースクリューは歯科医院の院内で製作できるようなものではないので自ずと市販品の中から選択することになります。そうなると私の知る限りにおいては10mmが最も長い歯科矯正用アンカースクリューです。また、骨の厚みとして口蓋正中のほうが大臼歯と大臼歯の間よりも厚みがあるのでアンカースクリューが脱落しにくいのです。そのような理由で私は舌側矯正治療の場合、口蓋正中部にインプラントを植立することが多いです。

また、ご存じだとは思いますが、A社のアンカースクリューをはじめとした口蓋正中にアンカースクリューを植立するのは主に舌側矯正装置と併用することを前提としています。唇側矯正装置で治療を行う場合にはアンカースクリューも唇側に植立することになります。

患者様からのご質問③

逆に、歯の健康に良い(矯正に伴う歯根吸収や歯肉退縮を防げる)と主張しているサイトもありました。それが本当なら、期間は短くできるし良い事だらけで+20万程度の費用でしたらやる価値あるのかもと思いました。こういう賛否両論あるものには慎重であるべきなんでしょうか。

当院からのお返事③

コルチコトミーについてですが、私自身の経験がありませんのであくまで未経験者としての認識としてお読みください。
1・コルチコトミーによる治療期間短縮は私が歯科医師になった25年前から既に歯科雑誌などでも報告されていたことです。
2・私は大学病院の矯正学教室に6年間在籍しておりましたが、その間、コルチコトミーによる矯正症例を見たことがありませんでした(医局員の誰も経験していないということです)。
3・私が直接知っている先生でコルチコトミーを積極的に行っているという話は聞いたことがありません。また、経験者のほうが稀というか、大学病院で1症例だけやってみたことがあるという先生が数名いる程度です。話は聞きましたが、だからといってコルチコトミーのメリットを強く勧められるということは無かったです。寧ろ、私が質問してもモゴモゴとした受け答えで話が進まなかった印象です。要するに大した意味は無かったということなのでしょう。

新しい製品が世間に受け入れられるためには
まず①有用であること、次に②費用対効果が成立していること、③認知されること、が必要だと思います。先のA社のアンカースクリューを例にあげると①は間違いなくクリアーしたのですが、②を成り立たせることがかなり難しく、③に至る前により安価な競合商品が発売されて競争力を失いつつあるということになるのでしょうか。
個人的見解ではコルチコトミーは③認知されること以外は専門家の間ですら成り立っていないと思います。そもそも、25年以上も経っているのです。さすがに認知くらいは進むものです。本当に有用ならばどんな困難があろうとも臨床に応用している先生がもっと多くいるはずです。

コルチコトミーに限ったことではないですが、25年以上も経って一般的に広まっていない医療技術がこれから見直されて花開く可能性があるのか?という意味でコルチコトミーには否定的です。

>逆に、歯の健康に良い(矯正に伴う歯根吸収や歯肉退縮を防げる)と主張しているサイトもありました

コルチコトミーを行うにはフラップ手術(歯茎を切開すること)が必要です。組織にメスを入れれば瘢痕組織(傷跡)が残ります。歯肉は皮膚ほど目立ちませんが同じことです。健康な柔らかい組織に比べて硬い繊維で柔軟性に欠けます。これは皮膚の怪我をイメージしていただければ想像は容易ではないでしょうか?一回の手術ならそう目立たないかもしれません。でも、2回、3回と続けたらどうなるのかは明らかではないですか?私自身が矯正治療をするとしたらコルチコトミーは絶対にやらないです。

患者様からのご質問④

コルチコトミーのこと教えてくださってありがとうございます。比較的新しい技術かと思っていたのですが、もう25年も前からあるのですね。新しいから矯正歯科と口腔外科(?)との融合がなかなか進んでいないのかなと
思い込んでいました・・・・。確かに本当に良い物であれば25年も時間があれば普及しているはずですね。歯茎の傷跡のことも考えていませんでした。やはり傷跡残るんですね。個人的には30歳を過ぎての矯正なため「成人矯正は歯茎が痩せてきやすい=ブラックトライアングルができやすい」と言われていることを心配していてコルチコトミーで少しでもリスクを減らせればいいなと考えていましたが傷跡が怖いのでコルチコトミーはやめようと思います。

*このページは実際に患者様からメールで頂いたご質問に対する当院のお返事を中心に記載しております。そのため、患者様からの質問内容については年齢、性別、文章の特徴等、Q&A形式で考えて問題ない範囲でデフォルメして記載しております。また、内容的にも理解が得られやすいよう適宜解説を追加・改変して記載しておりますので実際の遣り取りとはかなり異なることがございますのでご了承ください。

治療の目安

治療内容
歯科矯正用アンカースクリューを併用して歯を動かし、治療期間の短縮も図ります。
治療費(自費)
55,000円(税込)
治療期間・回数
植立に要する時間は麻酔をかける時間を除くと頬側で3分程、舌側で5分程度
リスク、副作用
    • 簡単な手術ですが、抗生物質と痛み止めを服用していただきます。患者様の多くは術直後に1度痛み止めを服用します。
    • 稀にインプラントが固定されず、植立し直す場合があります。